柴山哲也

安倍政権下では政権に批判的だった岸井成格、国谷裕子、古舘伊知郎氏といった有名キャスターが次々と番組を降板させられた事件があった。極めつけはNHK会長や経営委員の人事である。会長にはメディアとは何の関係もない経済界の籾井勝人氏が選ばれ、経営委員の中には百田尚樹、長谷川三千子といった人も知る右翼人士がそろって名を連ねていた。概ね安倍首相に近いといわれた人物が目立つ人選だった。NHK内部で何らかの忖度が働いたと思われる。 しかも籾井氏は就任の記者会見で「政府が右というものを左とはいえない」と露骨に公共放送の中立性を否定する政府寄り発言をして、NHKの路線変更を示唆した。そうか、NHKはこれからさらに右傾化するのか、と思ったものだ。案の定、原発報道を熱心にやっていた夜9時のニュース担当の大越健介キャスターが急に降板した。 最近ではテレビ朝日の報道ステーションで古舘氏とコンビを組んでいた小川彩佳キャスターの降板が伝えられている。小川キャスターは日本に珍しいクールなアメリカ型のテレビキャスターを思わせ、自分の意見をズバリといい、冷静に事実を伝える人だが、ネットメディアによれば、安倍政権に批判的であったため更迭されるというのだ。テレビ朝日の放送番組審議会委員長には、安倍首相のシンパといわれる幻冬舎の見城徹氏が就任している。